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鑑賞眼

レディー・ガガ 世界の歌姫がステージに込めた思い

レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)
レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)

世界的な歌姫、米国のレディー・ガガが8年ぶりに来日し、埼玉県所沢市のベルーナドームで2日間だけの公演を行った。延べ7万人のファンが熱狂した。

初日の9月3日の公演を見た。客層は幅広い。若いカップルもいれば、小さな子供を連れた家族もいるし、ミドルの夫婦の姿も。日本在住と思われる外国人が目立ったのは、先立って都内で行われた若手ナンバーワンのビリー・アイリッシュの公演も同様だった。

舞台には、コンクリートの打ちっ放しをイメージさせる無機質でSF的な装置がしつらえられている。丘陵の地形を生かした設計がされたこの野球場は、どこか古代の遺跡のようで、舞台装置と不思議な一体感があった。

予定から5分遅れで開演。吹きあがる火柱とともに、ガガが舞台に現れた。カプセルというべきか、よろいというべきか、あるいはエヴァンゲリオン的な人型兵器というべきか、ともかく「容器」に入って現れた。21世紀でもっとも個性的なアーティストの面目躍如だ。彼女自身がアートの一部なのである。

太く、芯のある歌声だ。「トーキョー、腕を振り上げろ!」。ガガが、観客をあおる。新型コロナウイルス対策で、まだ歓声を上げることはできない。だが、会場からは、うめくような声が上がった。興奮ぶりを示した。「トーキョー、もっと腕を!」。ガガは、叫び続けた。

レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)
レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)

2020年の最新アルバム「クロマティカ」からの曲と、映画の主題歌に使われ日本でも大ヒットした「ボーン・ディス・ウェイ」など代表曲を交えた選曲。これを舞台劇のように4幕とフィナーレに分けて構成。短い幕あいで、奇抜な衣装を次々に取り換え、SF的な舞台装置や個性的な映像を駆使。独自のビジュアルによる世界観を展開した。

屈強なダンサーが小柄なガガを持ち上げる演出などは、古典的なミュージカル表現ともいえるし、先輩歌手のマドンナを思い出させるダンスともいえるが、近未来的な廃退した味付けが施されているのがガガの特徴だ。

そして音楽は、拍子の頭で律義にバスドラムを踏み続けるダンスビートの音楽に伝統的なロック唱法を乗せ、過去と今を融合させる。

後半は、会場後方にこしらえた第二舞台へと客席の間を縫って歩いて移動。そこには、サンゴ礁のような飾りつけを施したピアノが置かれ、ガガが弾き語りを聴かせた。

無造作に腕を振り下ろしているように見えるピアノの弾き方に、どことなく英ロックバンド、クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの姿がだぶる。

そういえば、そのクイーンの「レディオガ・ガ」という歌の題名が、芸名の由来となった。少女時代、いじめなど心ない仕打ちにあったという。さまざまな思いが集まって、「レディ・ガガ」に結実した。

レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)
レディー・ガガの来日公演=埼玉県所沢市(提供/Masanori Naruse撮影)

ガガは、ときにロボットのような、ときにクモのような、ときに肌を露出させた衣装で歌い、踊りまくったが、懐古も未来も美も醜も不均衡に交じり合った混沌(こんとん)こそ、ガガの舞台だ。

そこには新しくもない、古くもない、美しくもない、醜くもない。ただ、あるべき「自分」を懸命に表現するガガがいた。

それは、「あるべきお前でいろ」という、ガガから観客への強烈なメッセージなのかもしれない。

(石井健)

9月3日、埼玉県所沢市のベルーナドームで。2時間10分。

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